基本のしつけ

人間の最良の友を得るために


「3年間幸せになるためには、結婚すればいい。10年間幸せになるためには、犬を飼えばいい」。うる覚えで、ちょっと年数的には違うかもしれませんが、英国の本にこんな言葉があるのを見つけました。当時の犬の寿命は長くて10年くらいだったでしよう。妻や夫との熱い情熱は持つのは3年くらいだとしても、犬とはその命がつきるまで愛情を保っていられる。英国人らしいアイロニーのこもった内容ですが、愛犬家にはうなづける言葉かもしれません。

さて、ここから人間が愛してきた「犬」というものを知るために、
「犬」についてお話をしましょう。

■□■ (1) 犬の祖先はオオカミか? ■□■


 ノーベル受賞者のコンラート・ローレンツ(動物行動学者。オーストリア人 1903~1989)は、彼の著書「人イヌにあう」の中で、ジャッカルが犬の祖先であり、ジャッカルが人の群の側に近づき、人間にとって初めての家畜となったと説いています。しかし、後に続く学者たちによって「犬の祖先はオオカミである」と主張され、ヒトとイヌが出会ったのも、2万年前とも3万年前とも諸説入り乱れるようになりました。1960年代には、ドイツのヘル博士は「近代生物学的」な遺伝子検査によって、犬の祖先は「オオカミ」であると断定。しかし現在、欧米の学者の中には、あまりに多種多様な犬の姿形や、性格の違いから「野生犬同士だったり、ジャッカルであったり、オオカミであったり、その時、その地域で交配が行われ、それらの犬の祖先たちが人間とともに他の地に渡り、そこでその土地にいる犬科の動物と交配していった結果が、今の犬種である」といった観点を述べています。
これらの仮説も新たな発見や時代と共に変わり、人類学や様々な考古学的所見から、当時の原始人であったヒトとイヌとが出会ったのは、3万年くらい前で、当時のイヌは狼でもジャッカルでもなく、すでに今の「犬」のような姿形をしていたのではないかと言われています。しかし、オオカミであったとしても、ジャッカルであったとしても、「犬科」の動物は「パックド・アニマル」(群で生きる動物)であることが、同じように群で生きる動物である人間と、共に生きられる特性を受け継いだといってもいいでしょう。


基本のしつけ
M-basic-training (pdfファイル、1070138バイト)